最初で最後の来日公演、『ビートルズ・アンソロジー』
そして名盤『All Things Must Pass』のリマスターなどなど…
90年代以降のジョージ・ハリスンは、ほかの円熟ミュージシャンがそうであるように
「自身のキャリア総括」にまい進してきました。
…まるで自分の死期が迫っていることを認識しているかのように。
Live In Japan
/George Harrison with Eric Clapton and Band [92]
91年、奇跡の初来日公演を敢行!74年の北米ツアー以来17年ぶり
ビートルズナンバー9曲を含むオールタイムベストな選曲、そしてバッ
クを務めるのがなんとエリック・クラプトン・バンド…となにもかもがス
ゴイ
の一言に尽きるこのライヴで、自身のキャリアを総括。さらにその勢いのまま、翌92年には英国公演(ただしクラプトン&ネイザン・イースト(b)は不参加)も敢行。
ジョージ・ハリスン Live In Japan '91
そのライヴでの手応えでエネルギーチャージをしたジョージは、93年のインタビューでは「ソロとトラヴェリング・ウィルベリーズのアルバムを来年出す!」と答えるほど意欲満々。結局ソレは実現しなかったけれど、ジョージの溢れんばかりの創作意欲は、94〜95年の
ビートルズ・アンソロジー・プロジェクトでのイニチアシヴの執りようにあらわれてますね〜。
ジョンのデモテープに、ポール+ジョージ+リンゴが音を重ねるという、ビートルズのヴァーチャル再結成が思いっきり話題になった「Free As A Bird」「Real Love」は、4人が一堂に会した奇跡の新曲、ということ自体が
感動的・歴史的でしたが…
ただ、コレがビートルズの音か?というと、やっぱり違うなぁ〜
プロデューサーがジョージ・マーティンじゃなくってジェフ・リン、という段階でおのずとジョージ色濃厚になるのは明らかで、「Free As A Bird」の1発目のスネアから完全に『Cloud NIne』の音でしょォ。で、続くのが(ビートルズ解散以降開花した)ジョージのスライドギターですからね〜。ビートルズっぽい曲というのは、結局レノン=マッカートニー作品をさすわけで(極論を言うと「Something」とかだってビートルズっぽくない)…ジョージ色が強いということは、ビートルズっぽくないということと同意ですから。
まぁいずれにしても、ビートルズにおいて"レノン=マッカートニー+α"の「+α」だったジョージが、ガンガン自分色を出せたこと自体、当時のノリノリっぷり
を象徴しているのは確か。でもこのあと、このビートルズ振り返りで勢いづいたのは、ジョージではなくポールでしたね〜。なんとジェフ・リン・プロデュースで新作『Flaming Pie』を発表、さらにビートルズに続いて「ウイングス・アンソロジー」(WINGSPAN)にも着手、と活動を加速!!
その一方、ジョージはというと、97年に喉頭ガンの手術を受けたり(その後順調に回復)、99年末には暴漢に襲われ負傷
するなど、コンディション的に音楽活動降るスロットルというわけにはいかなかったようです。特に99年の事件では、ナイフで胸を複数刺された(その1つは肺にまで達した)そうで、ボク含めニュースを聞いた世界中の人が"ジョン・レノンの悪夢"を想起したはず。ちなみにその犯人エイブラハムは精神鑑定でクロと診断、無期限で病院に収容されているらしい。さらに00年には、今度は肺ガンだとか脳腫瘍だとか、デマ含め「ジョージももはや…」といった報道が流れまくっていた記憶がありますが…訃報をきいたときは、ホント、身内の訃報のようにショックでしたね…

2000年11月29日、ジョージ・ハリスン死去。
Brainwashed /George Harrison [02/11]
波乱万丈な晩年にあって、「My Sweet Lord」のセルフカヴァー新録
を含む『All Things Must Pass』のリミックスを手がけるなど、自身のソ
ロ活動を総括することに専念してきたジョージが、99年頃からコツコ
ツ録音を行っていた新作
がコレ。結果的に遺作となったこの作品がリリースされたのは、ジョージの死から約2年、当初のリリース予定から約1年遅れの02年11月。でも、それだけ時間をかけたとは到底思えないのが、プロデューサー=ジェフ・リンと息子ダニー・ハリスンが極力手を加えないよう配慮したとおぼしき、装飾ゼロのシンプルな音。ただ個人的には正直物足りないんですよねぇ〜シンプル・単調すぎて。ジョンの『Milk And Honey』のような、中途半端感がどうも馴染めないんですよ。まぁ、本人不在の未完成作品なんだから当然なんだけど。
で、ここからは個人的な想像(妄想)なんだけど…このアルバム、ホントはもうちょっとカラフルな、それこそ『Cloud Nine』的な音像の作品に仕上がってたんじゃないかなぁと思うんですよ(少なくとも数曲は)。それを途中から「やっぱりナイなぁ」って路線修正したんじゃないかなぁ、で、こんなに時間がかかったと。
だから、このネイキッドな遺作が出た今、改めてジェフ・リンが思いっきり派手にプロデュースした新装盤をリリースしてほしいんですけど。ちょうど派手な装飾の『Let It Be』[70]⇒装飾カットの『Let It Be…Naked』[03]がリリースされた、あの逆パターンで。当時このセッションにポール+リンゴも参加か!?みたいな情報も00年ごろ流れてましたが、ソレをヴァーチャル再現するとか。つまり、ジョージのスライドギター滑りまくりの感涙バラード「Never Get Over You」あたりにポール+リンゴがオーヴァーダビング
なんていう"奇跡の共演"を最大の目玉にして…って、どうですかね???
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最後に…ジョージ死去にともなう、近しいミュージシャンたちの当時のコメントを…
彼のいない世界はまったくもって味気ないものだ。
ボブ・ディラン
↑さすが、詩人やなぁ〜(・ω・ノノ"☆ パチパチ!!!
一生を通してチャリティにも、そして友人にも寛大だった。
ミック・ジャガー
↑友人って、当然ジョージの妻を奪ったアノ人のことですよね?
彼がジョン(・レノン)とジャムってることを願ってるよ。
キース・リチャーズ
↑いや〜そのジャム、ゼヒ聴きたいですねぇ( ̄ー+ ̄)
(妻の)バーバラとボクは、オリヴィアとダニーに愛と光を贈る。
彼の愛と音楽、笑いの感覚はいつまでも忘れないよ。
リンゴ・スター
↑遺族をまず労って…さすが身内!
彼が去って、すごく寂しい。ボクはいつまでも彼を愛するだろう。
……彼はかわいい弟なんだ。
ポール・マッカートニー
↑ジョンのとき痛い目に合ってるだけに、考えてコメントしているのが伝わります。
でも、いちばんリアルなのは、あまりのショックでコメントを出せなかった
エリック・クラプトンですね、やっぱり。
