FLYING SAUCER 1947 /HARRY HOSONO & THE WORLD SHYNESS
ついにリリースされた、
細野晴臣さんのニューアルバム
『FLYING SAUCER 1947』。
YMO以来封印されてきた感のある
本格的
「バンドサウンド」による「歌モノ」作品といえるこのアルバムは
「カントリーアルバム」という統一カラーで一応括られてはいるものの
バンドの音や編成がそのテイストなだけで…
所謂「トロピカル三部作」のゴッタ煮サウンドから
アクを取り除いたかのような、むしろ純正「アメリカンミュージック」という趣でした。
…いずれにしてもこのアルバムは、個人的にはたまらなくイイです。
HARRY HOSONO & THE WORLD SHYNESS
細野晴臣 (Vocal, A.Guitar & Others)
徳武弘文 (E.Guitar, A.Guitar & 6 St.Bass)
高田漣 (Steel Guitars & Flat Mandolin)
コシミハル (Accordion)
伊賀航 (A.Bass)
浜口茂外也 (Drums)
以下、細野さんのコメント(「サウンド&レコーディングマガジン」07年10月号)を引用しつつ
アルバム収録曲を独断と偏見でレビューしてみました。
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FUJI ROCKでハリー・ホソノ・クインテットをやったときに徳武(弘文)君が入って
そこから変わったの。徳武君が来たら、カントリーをやらない手はない
。
…ということでオープニングは、「古き良き時代」のカントリーナンバーのカヴァー2連発。
01. PISTOL PACKIN' MAMA (Al Dexter)
アメリカのカントリー歌手=アル・デクスターの、43年のヒット曲。
02. THE WAYWARD WIND
/風来坊の唄 (Stan Labowsky/Herb Newman)
アメリカの女性シンガー=ゴギ・グラントの、56年の大ヒット曲。
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還暦記念じゃなくて、円盤飛来60周年
ということでやろうと。
所謂「ロズウェル事件」の年に生まれたことに因んで
アルバムタイトル含め、「円盤」というテーマがこじつけ的に決まった割に
あまり円盤に関係した曲が多くない…と、後付け的に加えられたのがこれらの楽曲。
03. BODY SNATCHERS (H.Hosono)
細野さんのSF志向全開の、YMO散開後初のソロアルバム『S・F・X』(84)収録
曲。SFホラー映画「ボディ・スナッチャー」(57)をモチーフにした、デジタルビート
のヒップホップテクノが、ニューオーリンズのセカンドラインビートによる、アーシーなアレンジで再生。で、個人的にはこの曲がベストトラック。このアルバムでは基本的にヴォーカル&ギターに徹する細野さんですが、この曲では「待っていました!」と唸らずにはいられない、エレキベースがうねる!!
04. FLYING SAUCER BREAKDOWN (H.Hosono)
アルバム中唯一の新曲。この曲のエレキベースも細野さん。
05. CLOSE ENCOUNTERS /未知との遭遇のテーマ (John Williams)
S.スピルバーグのSF名作「未知との遭遇」(77)のテーマ(ジョン・ウィリアムズ作
曲)のカヴァー。あの超有名な「五音階」が挿入された壮大なオーケストラ曲が
「ゴッドファーザー愛のテーマ」のような哀愁感漂うサプライズアレンジで再生。
06. MIRACLE LIGHT
/ミラクル・ライト (Chisato Moritaka/H.Hosono)
歌詞にUFOが出てくるということでセレクトされた、細野さん作曲/プロデュースに
よる、森高千里のシングル「ミラクルライト」(97)のセルフカヴァー。この曲のみ細野さんの一人多重録音。タジ・マハールっぽい雰囲気。
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さすがに何度もライヴで演ってるからみんなすごく上手くて
もうそれだけで僕は満足しちゃった。あぁ、録音してよかったなと
。
続いては、05年の狭山ライヴ以来、鉄板レパートリーとなっていたこの2曲。
07. MORGAN BOOGIE /モーガン・ブギ (H.Hosono)
細野さん監修のTVアニメサントラ『南の島の小さな飛行機バーディー』(06)収録
曲。
08. POM POM JOKI /Pom Pom蒸気 (H.Hosono)
「トロピカル三部作」の最高峰といえる名盤『泰安洋行』(76)収録曲。セルフカヴ
ァーは、ニューオーリンズ録音の『Road to Louisiana』(ハリー&マック/99)
に続いて2度目。この曲のキモといえるブギーピアノが聴けないのは残念だけど、徳武さんと高田漣さんのギターソロはそれを補うのに十分、というかそれを超えるほど!
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テクノをカントリーに変換できるっていう黄金律
を知ってしまった。
そして、往年のファンにはたまらない、YMO現役時代のソロ曲も…!
09. SPORTS MEN (Giles Duke/H.Hosono)
YMO在籍中唯一のソロ『フィルハーモニー』(82)収録曲。トリビュートアルバム
で高橋幸宏さんがカヴァーしたこともあり、HASのライヴでも演奏されたのです
が、そのときに「あ、これはカントリーになるな」と気づいたそう。浜口茂外也さんが最初、昔のカントリー曲だと思ったというのも納得の、ハマリ過ぎのロンサムアレンジで再生。
10. SHIAWASE HAPPY
/幸せハッピー (Kiyoshiro Imawano/H.Hosono)
実質的なHIS(細野+忌野清志郎+坂本冬美)復活作といえる、坂本冬美のシ
ングル「Oh, My Love」(05)のカップリング曲。同じくライヴの鉄板レパートリ
ーで、もちろん清志郎もヴォーカル参加!(実際は、そのヴォーカルを含むベーシックトラックにオーヴァーダビングしたものなのですが)
11. YUME-MIRU YAKU-SOKU /夢見る約束 (H.Hosono)
昭和歌謡+テクノという趣の、ソロ『フィルハーモニー』の付録ソノシート収録曲
(現行CDのボーナストラックとして収録)。TV「僕らの音楽」でUAと共演したテイ
クにオーヴァーダビングしたもの。
12. FOCAL MIND /Humming Blues (H.Hosono)
細野さんも1曲楽曲提供した、忌野清志郎『夢助』(06)のアウトテイク(のデモ)。
トリビュートアルバムにそのデモが収録されましたが、「ソロアルバムで完成させ
る」という約束を果たす形でめでたく収録。
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そういえば、火星人が地球に攻めてくるSFコメディ「マーズ・アタック!」で
カントリー音楽を聴いた火星人たちが次々死んでいく、というオチがありました。
細野さんは「UFOとカントリーは意外とよく合う」とコメントしていましたが
合うんだか合わないんだか…。
ちなみに、ウチの妻は細野さんのことを
「細野奥道?」と言っていました

………松尾芭蕉か!